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映画に

見たものについての覚書 印象をピンで留め置くように

ザ・ヴァンパイア~残酷な牙を持つ少女(2014/アメリカ)アンナ・リリー・アマポマー

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原題の"A Girl Walks Home Alone at Night"故に見たいと思った。シンプルなリズムの、歯切れのいい潔さ。孤独と孤立と孤高のイメージが込められた言葉の連なり(予告編のほうはその美点をよく把握していたように思える)。

自主映画的。学生の制作した自主映画だと言われてもうなずけるように感じる。少なくとも画面だけで言えばニュアンスに頼った映画。一つのショットへの滞空時間は短いわけでもないが、見て取るべきものはじつはさしてない。あるいは見て取るべきものはほぼ一つ、主演の少女(シェイラ・バンド)の静謐な佇まいと面立ち、あるいはその官能的に緩慢な表情(無表情)と仕種のみ。恐らくは“夜の闇の中に黒衣を纏った少女”という、画のイメージありきで映画の具体像を組み立てたのじゃないか。全編モノクロなのは少女の纏う風俗的な黒衣(=チャードルというらしい)を街を覆う夜の闇へとイメージ上で敷衍する為だろうし、中東人らしい彫りの深い顔立ちと黒い髪と瞳の組み合わせがやはり光陰が黒白で表現されるモノクロの画面でこそ審美的に映える。

演出家が最も画面に収めたかった場面もわかるように思えてしまう。青年に背を向けていた少女が、後に近づいた青年に少しずつ、本当に少しずつ緩慢な動作で振り返りながら、ついに身をゆだねてみせる場面。その動作の緩慢さをこそこの上ない官能的なイメージとして画面に収めたかったのじゃないか。それはもちろん少女が青年に自分の心を開く瞬間に相違ないが、「瞬間」というにはあまりに緩慢なその動作の持続が、端的に少女の心の動きそのものとして確かに画面に具体像として収められていたように見えた。

「ザ・ヴァンパイア」という邦題だが、これがもし原題そのままで公開されていたら、むしろ映画が描いてみせようとした実相にちかいイメージが観客にダイレクトに伝わったかも知れない。