映画に

見たものについての覚書 印象をピンで留め置くように

洋画(ヨーロッパ映画)

家族の灯り(2012/ポルトガル=フランス/マノエル・ド・オリヴェイラ)

その映画の中の空間は、書割じみた風にのっぺりと平面的に映し出され、それはファーストショットからして全くそうなのであって、そんな判り易い奥行きを一見欠いたその映画の中の空間は、やはりなぜかしらサイレント期の映画を想起させる。 その映画のほとん…

革命前夜(1964/イタリア)ベルナルド・ベルトルッチ

貌。少女的なコケティッシュを垣間見せる、けれども確実に齢の陰が刻まれつつある、その貌の映画。だからほとんどその貌にだけ画面は注視しつづけて映画は終わる。その貌があらわにするあの表情この表情は如何にも媚態だが、しかし自らを投げかけるべき確た…

灼熱(2015/クロアチア=スロベニア=セルビア)ダリボル・マタニッチ

灼熱とはなんのことか。あるいはそれは画面に刻印された陽光のことか。しかし灼熱と言うにはそれは多分に翳りを帯びて、けっして溌剌とした輝きを見せつけたりはしない。 同じ男女の役者が、1991年、2001年、2011年と、十年ごとに時代が区切られた挿話の中で…

勝手にしやがれ(1959/フランス)ジャン=リュック・ゴダール

この映画を見るたび、ときに「ああ、これが」と実感できるショットがある。たとえば走行する車上から不図した拍子に垣間見える夜半のパリの街並(清冽と並ぶ街灯の光)、たとえばベルモンドが横死に向かって(緩慢にしかし確実に)よろめき乍ら疾走する白昼…

回転(1961/イギリス)ジャック・クレイトン

黒衣の女幽霊が写っている。そこに確かに黒衣の女幽霊が写っているように見えてしまうのは、それが面影でありながら同時に面影でしかないからかも知れない。なんでそんなものを映し出すことが出来るのか。一つには画面がモノクロであること、二つにはそれが6…

万事快調(1972/フランス=イタリア)ジャン=リュック・ゴダール、ジャン=ピエール・ゴラン

映画(商業映画)を撮る(撮らなければならない)、というテーゼが第一義に立つ。そして、映画(商業映画)を撮るには資金を集めることが必要で、資金を集めるにはスターをキャスティングすることが有効で、スターをキャスティングするには題材となる物語が…

右側に気をつけろ(1986/フランス=スイス)ジャン=リュック・ゴダール

「映画の一番の重労働は運搬」。ゴダール演じる「公爵」は銀色のフィルム缶を手に携えて運ぶ。86年当時はまだ映画=フィルムだった。神代辰巳『濡れた唇』の冒頭、若い男が自転車にフィルム缶を乗せて運んでいるイメージは、映画素人でしかない自分にも如何…

勝手に逃げろ/人生(1979/スイス=フランス)ジャン=リュック・ゴダール

女優大会。売春を扱うので結構描写は際どい。でも「男と女にはけっきょくアレしかないんよ(『四畳半襖の裏張り』)」という悲哀のこもる事実から逃避しないのは大人らしく潔い。 女優の顔が、生々しく艶めく。ふつうの意味での演技でも演出でもなく、キャメ…