映画に

見たものについての覚書 印象をピンで留め置くように

洋画(アメリカ映画)

ゴースト・イン・ザ・シェル(2017/アメリカ)ルパート・サンダース

役者の肉体、あるいは肉体の役者。つまるところそれこそが「アニメ」ならぬ「映画」のなけなしの強味なのかも知れず。 スカヨハ演じるところの「ミラ」こと少佐は、いきめぐる人びとからことあるごとに「美しい」と評されるが、「美しい」のはじつのところ生…

クリミナル 2人の記憶を持つ男(2015/イギリス=アメリカ)アリエル・ブロメン

映画の中に世界の細部を切り取る“描写”。 冒頭に展開される銃撃戦。無政府主義者の徒党による襲撃は、第一撃でタクシーの運転手の頭蓋を撃ち抜き、つづいてタクシーのタイヤを撃ち抜きパンクさせる。むろん、移動を封じる為の襲撃の基本的な段取だ。対抗する…

沈黙 ーサイレンスー(2016/アメリカ)マーティン・スコセッシ

映画には何があるか。何もない。映画は現実の事物と向き合うところからしか生まれない。ということは、現実の事物と向き合うことなくして映画そのものにはじつは何もない。なんらの被写体もなき無の時空に映画は実存しえない。映画は全くの「闇」を表象でき…

マッドボンバー(1973/アメリカ)バート・I・ゴードン

爆弾魔チャック・コナーズ、刑事ヴィンセント・エドワーズ、強姦魔ネヴィル・ブランド。 この三人のおやじどもが、その独特に型にはまったキャラクターで映画を支える。とくにチャック・コナーズは、2メートル超もあるらしいその体躯をもてあます様に身を屈…

ピートと秘密の友達(2016/アメリカ)デヴィッド・ロウリー

空撮から始まる。なぜなら、それは空飛ぶ獣の物語だから。そんな律義さに、既に映画の良心がにじみでている。空撮は映画の中で幾度となく敢行されるが、それらが如何にも空飛ぶ獣から見おろされたようなやわらかな軌道を飛翔しているように見えるのは、たぶ…

ドント・ブリーズ(2016/アメリカ)フェデ・アルバレス

アメリカ郊外の、廃墟同然の住宅街の一角の、しがない一戸建て家屋が、しかし立派にスリラーの舞台になる。そうなりうるのは、一戸建て家屋の中の空間をしっかり空間として隔てて際立たせるからで、あとはその一戸建て家屋の主を“怪物”に仕立てるにちょっと…

ハドソン川の奇跡(2016/アメリカ)クリント・イーストウッド

原題の“Sully”とは、サリーフィールド機長の愛称としてアメリカでは聴き馴染みのある固有名詞の響きなのかもしれないが、それが敢えて映画のタイトルに冠せられてあることには逆説めいた含蓄があるようにも思える。固有名詞は確かに個人を示す固有名詞であり…

インサイド・ヘッド(2015/アメリカ)ピート・ドクター、ロニー・デル・カルメン

「よろこび」の感情をつかさどるらしい女の子キャラが暗闇の中から初登場すると、まず彼女が示す仕草は自分自身の体から伸びる手足を確認する仕草だったりする。「感情」が、まず生まれ出ずるなり自分自身の手足を確認する。これって妙だ。変だとは言わない…

ペイルライダー(1985/アメリカ)クリント・イーストウッド

思うに、映画は意識されざる細部の塊で、しかしそれを生み出すのは一定の企図に基づく意識されたる仕事で、とは言え意識されたる仕事は意識されざる細部の全てには及ばず、では意識されたる仕事によって意識されざる細部の塊として生み出される矛盾した存在…

騎兵隊(1959/アメリカ)ジョン・フォード

ジョン・フォードのジョン・ウェインはやはりここでもやたらに手にしたものをぞんざいに放りだしたり投げつけたりする。それは確実に意識的な演出で、ジョン・ウェイン演じるマーロー大佐が過去の妻との死別を物語るくだりなどを見ればそのことは明らかだが…

荒鷲の翼(1957/アメリカ)ジョン・フォード

航空映画かと思っていたら海軍出身の脚本家の伝記映画。主人公が軍属である前半は軍隊ものだが、決定的なハンデを負って海軍を退いてからは伝記もの。制服は映画と相性がいいのかも知れない。海軍、陸軍、警察官。それが集団でくんずほぐれつする乱闘は制服…

人生は小説よりも奇なり(2014/アメリカ)アイラ・サックス

熟年のゲイのカップルが同性婚法制化に伴い晴れて結婚するが、それ故に逆にふたりの居場所を失うことになる。 ニューヨークの映画。その街がまずは舞台であり、またその街に住まう人びとの物語でこそあり。必ずしも人影の介在しない、しがないビルの屋上から…

キャロル(2015/アメリカ)トッド・ヘインズ

描き出される物語、つまりは世界、その中心となるふたりの女性こそが画面の中心ともなれど、総体の印象からすればキャメラはふたりの人物、その肖像に接近しすぎているようにも思われ、いわばこのふたりが比喩的にも実際的にもその時その場でどんな世界の中…

旅情(1955/イギリス=アメリカ)デヴィッド・リーン

映画が始まると、海上に伸びる線路上を鉄道が走っていく図。それだけで俄かに映画は映画づく。ヴェニスの街につけば格安運賃の「バス」で行く水路からポーターの案内する裏道じみた狭い路地を経て、ヒロインは宿に着く。観光映画。ヒロインは列車の中にいる…

ヘイトフルエイト(2015/アメリカ)クエンティン・タランティーノ

西部劇に出てくるコーヒーは、多分大方ブラックなんだろうが、その液体のディテールなんぞが描写されることはごくまれなくせに、大抵の映画で大抵の人物が口にするし、そして結構頻繁に「これがコーヒーかっ(こんなもん飲んでんのかっ)」ってな感じで無下…

ザ・ヴァンパイア~残酷な牙を持つ少女(2014/アメリカ)アンナ・リリー・アマポマー

原題の"A Girl Walks Home Alone at Night"故に見たいと思った。シンプルなリズムの、歯切れのいい潔さ。孤独と孤立と孤高のイメージが込められた言葉の連なり(予告編のほうはその美点をよく把握していたように思える)。 自主映画的。学生の制作した自主映…

ザ・ウォーク(2015/アメリカ)ロバート・ゼメキス

回想で綴らねばならない物語だから、いっそ開き直って主人公自身に自覚的な語り部を演じさせる。まどろこしくなくていい。くわえてその大道芸人的なハッタリじみた身振り手振り口振りが如何にもそれらしい意匠として映画の色を示してくれる。 物語の布石。円…

コンタクト(1997/アメリカ)ロバート・ゼメキス

9回裏2アウト2ストライクからの逆転満塁ホームランみたいな物語を、たとえ虚構であっても現在形のまがうことなき現実として感得させる力が映画の力のひとつのありよう。言い換えれば奇跡が起こる瞬間をつかまえて見る者の眼前につきつける力。地球外知的…

ブリッジ・オブ・スパイ(2015/アメリカ)スティーブン・スピルバーグ

人と人とのコミュニケーションをこそ主題として描く映画だから、セリフを含めたそのやりとりの機微こそ見て取り、聞き取るべきものになる。たとえば「不屈の男」を意味するというロシア語のセリフに英語字幕はなく、東独でのドイツ語にもやはりそれはない。…

キャストアウェイ(2000/アメリカ)ロバート・ゼメキス

飛行機の墜落にこれという原因も明かされず(描かれず)、ことは当事者にとって唐突に起こる。唐突に起こるその出来事は否応なく当事者を巻き込み、運命の渦中に投げ込んでしまう。 物象としての荒海。飛行機の操縦席の窓に迫りくる海面然り、緊急ボートただ…

イコライザー(2014/アメリカ)アントン・フークア

こういう内容で132分は余分に感じる。基本センチメンタルな描写が挿入されるために余分を食っているのじゃないか。それが必要なのは動機的に主人公が初犯者だからで、カットを細かく割りつつ(というより余分なショットで誤魔化しつつ)、迷っているふうや悩…

カウボーイ&エイリアン(2011/アメリカ)ジョン・ファヴロー

「締まっている」か「緩んでいる」かと言えば、この映画は正直後者の類。 人と人との表情が交錯する画面とか、感傷的な同一化を曖昧に強いる、つまるところ何を見たことにもならない様な画面。親と子でも男と女でも異人種・異民族(異星人?)間でも、同じ。…

ファーナス/訣別の朝(2013/アメリカ)スコット・クーパー

正しい感覚かどうか自分でわからないにせよ、この映画のウッディ・ハレルソンを見ていたら、アメリカにはまだ映画俳優がいるんだということを思わされる。所謂「スター」ならずとも面構えで堂々と視線をひきうけられる。堂々と映画を、物語をひきうけてくれ…

白鯨との闘い(2015/アメリカ)ロン・ハワード

原題″In the Heart of the Sea″。「海の中心」。ただ、″Heart″には文字通りに「心臓」の意もかかっているかも知れない。劇中、漂流中の人肉食いのエピソードに於いて、犠牲になった仲間の肉のうち心臓を真っ先に食べた、という話は出てくる。それ以上ほりさ…

スター・ウォーズ/ジェダイの帰還(1983/アメリカ)リチャード・マーカント

副題は、昔「ジェダイの復讐」だった。 三作目、冒頭で少しばかり成長したルークを見るのは子供心には頼もしかった。「おお成長してる」、と。そんなところはサーガに接することの面白味ではある。 これら最初の三部作は、まだ素朴な意味で自由ではあった。…

スター・ウォーズ/帝国の逆襲(1980/アメリカ)アービン・カーシェナー

一作目の大ヒットを受けての制作だったのだろうが、どことなく画面を構成するモチーフが潤沢になっているように見える。冒頭、旗艦のブリッジに立つダース・ベイダーの黒いマスクの後頭部、その光沢の滑らかさにすでにそれが出ているようにさえ見える。 二作…

スター・ウォーズ/新たなる希望(1978/アメリカ)ジョージ・ルーカス

今現在一般的に視聴されるのは以前<特別編>として公開された完全版(改訂版?)らしい。目立つCG映像以外どこにどのように手が加えられているのかはファンでもなければ判別できない。 今更観て気が付いたのは、宇宙空間をも主な舞台とするのにも関わらず…

スター・ウォーズ/フォースの覚醒(2015/アメリカ)J・J・エイブラムス

2016年元旦初回、大型スクリーンの前に客もまばらなしがない地方都市のシネコンで。 これがエピソード4から6の焼き直しなのは見た人なら誰でもわかる。わかることが前提の作劇は確信犯で、続くエピソード8、9の前段なのだと思えばそれもいい。 かつて威…